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思考法

コンサルとして「他人に期待しないこと」は正義なのか?

tsumakawa

「他人に期待しない」という考え方と態度

多くの場合、共通の目的や目標に向かってチームで仕事をするコンサルタントにとって、他者との関わりや協業は避けて通れず、後輩、同僚、上司、クライアントを含め、様々

なタスクや検討が相互に関係し合ってプロジェクトが進んでいきます。

それ故、他者の仕事や成果物を前提として自分自身のタスクを進めた場合、思いもよらない不備や誤りに出くわすことも多く、また他者のタスクの進捗によって自分自身のタスクが思うように進まないことも多々あります。

いくら自分が迅速かつ正確な仕事をしていても、周囲のタスクの出来によってプロジェクト自体が失敗に終わったり炎上することもあり、チームマネジメントをする立場であれば尚更、チーム全体のタスクの進捗と品質に責任を負うことになります。

そんなコンサルタントのチームマネジメントにおいては、「他人に期待しないこと」は一見して合理的に思えます。

他者に過剰な期待を抱けば、その期待が裏切られたときに思わぬ手戻りや修正対応、追加タスクが必要になる上、気持ちの面でも失望や怒りを感じることになり、結果として心身ともに自分自身が疲弊します。

そのため、最初から期待しないスタンスを取ることで、自分のストレスを軽減し、安定的に仕事を進められるという考え方もあります。

しかし、これは本当に正しいアプローチでしょうか?

特に、チームの成長や成果を最大化することを求められるリーダーにとって、この考え方にはいくつかの限界があります。

本稿では、この「他者に期待しない」という考え方について、メリットと限界、そして適度なバランス感覚を筆者の経験からお伝えします。

他人に期待しないことのメリットと限界

メリット

1. ストレスの軽減

他者に期待を抱かないことで、失望や怒りといった負の感情を減らすことができます。

これは、常に全体を見渡し感情的な波を抑えて冷静な判断を下すことが求められる管理者やリーダーにとってとても重要かつ有益です。

また、リーダーがどっしり構えることで、チームのメンバーやステークホルダーに要らぬ心配や憶測をさせないという副次的なメリットもあります。

2. リカバリー体制を整えられる

失敗を前提に動くことで、万が一のトラブルにも対応しやすくなります。

たとえば、重要な業務のバックアップを取る、リスクマネジメントを徹底する、といった準備が可能になり、不測の事態を減らすことができます。

また、不測の自体が発生した際にも、どの段階からどのようにリカバリーをすべきか把握できているため、立て直しまでの時間の浪費を最小限に抑えることができます。

限界

1. メンバーの成長機会を奪う

期待をしないことで、部下やチームメンバーに「信じてもらえていない」というメッセージを無意識に伝えてしまいます。

この状態では、メンバーが自発的に挑戦する意欲を削いでしまう可能性があります。

また、最終的にリカバリーしてもらえるという安心感が甘えに繋がり、最後までやり切る責任感や細部のチェックが疎かになる場合もあります。

2. チームの可能性を狭める

チームとしての潜在力を引き出すには、メンバー一人ひとりの成長や貢献が欠かせません。

他者に期待をしない仕事の仕方では、チーム全体のパフォーマンスが停滞するリスクがあります。

また、人間1人の時間はどう足掻いても1日24時間であり、どこまで効率性を突き詰めたとしても自分1人でできることには制限があります。

小さなプロジェクトでは自分1人だけが踏ん張ってどうにかなる場合でも、より大きなプロジェクトとなるとそうもいきません。

他者に期待することの重要性

部下やチームメンバーへの期待」は、リーダーとして欠かせない姿勢です。

この期待が、部下の成長やチーム全体のパフォーマンス向上につながり、期待をかけることには次のような意義があります。

信頼関係の構築

期待されることで、メンバーは自分がチームに必要とされていると感じ、モチベーションが高まります。

信頼が根付いた環境では、失敗を恐れずに新しい挑戦ができるようになり、結果として成功と自信を得て次の挑戦へと繋がる好循環が生まれます。

昨今よく言われる「心理的安全性」の議論はこの文脈に包含されます。

潜在能力の引き出し

「この仕事は君に任せたい」「君ならできる」と伝えることで、メンバーの自己効力感が高まり実力以上の成果を発揮することがあります。

リーダーの期待は、メンバーの成長を後押しする強力な原動力となります。

特に経験の少ないメンバーや過去に失敗を経験したメンバーに対しては、外部からの「やればできる」という期待と言葉が背中を後押しする重要なファクターとなります。

挑戦をしないことには成功体験を積むことができず、従って自信を育むことができません。

個人のパーソナリティをこうりよし、過度な期待やプレッシャーとならないように注意が必要ですが、やはり潜在能力を引き出し自分の能力を良い意味で正しく自覚してもらうためにも、「期待すること」は重要なきっかけとなります。

リーダーシップの発揮

リーダーとしての役割は、単に指示を出すことではなく、メンバーの可能性を信じ、それを実現するための環境を整えることです。

そのため、期待をかけることはリーダーシップを発揮する一環と言え、逆に自分自身の一喜一憂や仕事におけるモチベーションや気分のためにその点を疎かにするのは、管理者・リーダーとして十分な価値を出しているとは言えません。

失敗を前提にリカバリーを準備する重要性

他者に期待する一方で、プロジェクトマネジメントの観点から、失敗が起こる可能性も視野に入れることはとても重要です。

期待だけでは物事は進みませんし、失敗が起きた際にチーム全体が混乱するようではリーダーの役割を果たせません。

また、適切なフォロー無くしてチーム内の信頼関係を構築することは叶わないため、何かあった時に即座に適切な対応を取る準備があることはチームマネジメントの上でとても重要です。

具体的な対策

リスクマネジメントを徹底する

あらゆるプロジェクトには予備プランや代替案を用意しておくことが不可欠です。

たとえば、重要なタスクを複数人で分担する、進捗を細かくモニタリングする、といった体制が求められます。

失敗を許容する文化を作る

「失敗してもいい、そこから学べばいい」といった文化を醸成することで、失敗を過剰に恐れることなく挑戦できる環境を作ります。

これは、期待を裏切られた際のリーダー自身の感情的な負担の軽減にも繋がりますし、目の前に起きている問題を「誰のせいか」ではなく「どうやって解決するか」という捉え方で物事を前に進める意識の醸成にも大いに役に立ちます。

リーダーに求められるバランス感覚

では、他者に期待することと、失敗を前提に準備することは、どう両立させればいいのでしょうか?

ここで重要なのは、「期待する姿勢」と「現実的な準備」を同時に持つというバランス感覚です。

期待をかける際の注意点

適切な目標を設定する

過大な期待はメンバーを追い詰める原因になります。

相手の実力や状況に応じた目標を設定し、少し背伸びするくらいの挑戦を与えましょう。

フィードバックを欠かさない

期待に応えた場合には賞賛を、失敗した場合には建設的なフィードバックを与えることが重要です。

このフィードバックが次の成長につながります。

失敗を前提にした準備のポイント

チーム全体の透明性を確保する

進捗状況や問題点を可視化し、失敗が起きた場合にも迅速にリカバリーできるようにします。

問題解決の練習を積む

日頃からトラブルシミュレーションを行い、チームとして問題解決のスキルを高めておくことも効果的です。

結論:期待と準備の両立がリーダーシップの本質

他者に期待しない仕事の仕方では、確かにリーダー自身のストレスは軽減されるかもしれません。

しかし、それでは部下やチームメンバーの成長を妨げることになり、最終的にはチームの成果を引き下げる結果を招きます。

一方で、過剰に期待しすぎると、リーダー自身が消耗し、失敗が起きた際に混乱を招きます。

リーダーシップにおいて重要なのは、他者に適切に期待しながら、失敗のリスクを見越して準備を整えるバランス感覚です。

期待をかけることでメンバーを成長させ、チームの最大値を引き出すとともに、現実的なリカバリー体制を整えることで、安心して挑戦できる環境を提供する。

この両輪が揃ったときに、チーム全体として大きな成果を上げることができるのです。

リーダーとしての役割を全うするために、期待と準備の重要性を再認識し、実践していきましょう。

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経営コンサルタント
外資系コンサルティングファームで経営コンサルタントとして働く30代。 これから「コンサルタント」というキャリアそして人生を目指す学生、社会人に向けコンサルタントという世界で生き抜くための考え方やおすすめの書籍情報を執筆中。
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