『やさしいがつづかない』を読んで考えたこと|なぜ人は身近な人ほど優しくできないのか
この記事は、稲垣諭氏の『やさしいがつづかない』を読んで考えたことを、自分なりに整理し言語化するための備忘録です。
本書は、現象学を専門とする哲学者が「やさしさ」を性格や感情ではなく、自分と他人の間にあるコントロール可能な問題として捉え直す一冊です。
「自分は本当は優しい人間でありたい」
「でも、なぜか身近な人にはきつく当たってしまう」
「最初は親切にできても、だんだん疲れて嫌になる」
「部下や家族に対して、良かれと思ってコントロールしてしまう」
こうした感覚に覚えがある人にとって、この本は必読の書となっています。
私がこの本を読んで一番強く感じたのは、優しさとは感情ではなく、相手のコントロール権を奪わないための態度と技術であるということです。
この記事を通じて、マネジメントや人との関わりに悩む方に、少しでも考えるきっかけを提供できると嬉しいです。
「そもそも優しさは続かないもの」という発見
『やさしいがつづかない』この言葉には、多くの救いが含まれています。
なぜなら、多くの人は「優しくできない自分」を責めているからです。
私自身、「やさしさ」というテーマに関して、長い間思い悩んできました。
- 最初は優しくできる
- 余裕があるときは人に配慮できる
- 初対面の人には丁寧に接することができる
- でも、関係が続き、責任が生まれ、相手が何度も同じことを繰り返し、自分の余裕がなくなってくると、優しさが削れていく
これは、多くの人に共通する普通のことです。
優しさは、無限に湧いてくるものではありません。
むしろ、優しさは余裕からしか生まれないものです。
だから、忙しいと優しくできない。
疲れていると優しくできない。
自分ばかり損をしていると感じると優しくできない。
相手にフリーライドされていると感じると、優しさは一気に痩せ細る。
ここで大事なのは、「優しさが続かないことを単なる人格の弱さとして処理しないこと」です。
そして、優しさが続かないことには理由があります。
人間はフリーライダーを許せない
人は、根本的にフリーライダーを許せません。
自分は努力している。
自分はルールを守っている。
自分は我慢している。
なのに、誰かがその上に乗って得をしている。
この感覚があると、人はかなり強い拒否反応を示します。
職場でも同じです。
- 自分は真面目に働いている
- でも、働かない人が同じ給料をもらっている
- 自分だけがフォローしている
- 相手は感謝もしない
- しかも、それが当たり前になっていく
こうなると、優しさは続きません。
これは単なる心の狭さではありません。
人間には、不正義を許せない感覚があります。
一方で、不正義を許せない反面不正義すら許そうとする寛大さも持っている人間は不思議な存在です。
そして、この矛盾が人間らしさなのだと思います。
優しさが続かないから、人類は制度を作った
本を読んで感じたことは、優しさが続かないからこそ人間は制度を作ってきたということです。
その一つが、人権です。
人間の優しさだけに頼っていたら、社会は持ちません。
優しい人が疲れ果てます。
強い人の機嫌で弱い人の扱いが決まります。
余裕のない人が増えれば、他者への配慮は簡単に消えます。
だからこそ、人間の気分や余裕に左右されない最低限の尊重として、人権のような考え方が必要になった。
これは本書における非常に重要な点です。
優しさは美しい。
でも、優しさに頼るだけでは危うい。
だから、社会には仕組みが必要です。
会社にもルールが必要です。
マネジメントにも基準が必要です。
「優しくしましょう」だけでは組織は回りません。
それは、人間の優しさには限界があるという事実に基づいています。
「それであなたはどんな損害を被ったのか?」という問い
この本を読んで考えた中で、個人的にかなり大事だと思った問いがあります。
それは、「あなたはどんな損害を被ったのか?」という問いです。
人間である以上、他人の言動に腹が立つことはあります。
- あの人の態度が気に入らない
- あの人の発言が許せない
- あの人の行動が目につく
- あの人が評価されているのが納得できない
でも、そこで一度立ち止まって考えてみてください。
それで自分は具体的に何を失ったのか。
もちろん、実害があるなら対処すべきです。
自分の仕事が増えた。
評価に悪影響が出た。
チームの成果が下がった。
精神的に明確な負荷を受けた。
それなら、問題として扱うべきです。
ただ、実害がそこまでないのに、他人の言動だけで自分の人生を消耗していることもあります。
他人の行動を見張り続けると、自分の人生が削られます。
他人の不正義に怒り続けると、自分の時間と感情が奪われます。
優しさ以前に、まず自分を守るためにも、自分が本当に損害を受けているのか、これを冷静に見極める必要があります。
優しさとは、感情ではなく具体的な言葉と行動である
優しさというと、感情の問題に見えます。
- 相手を思いやる気持ち
- あたたかい心
- 善意
- 共感
もちろん、それらはとても大切です。
ただ、実務や人間関係で本当に問われるものは、感情ではありません。
問われるのは、具体的な言葉と行動です。
どれだけ相手を大切に思っていても、言葉にしなければ伝わりません。
どれだけ優しい感情を持っていても、行動として表れなければ意味がありません。
逆に、内面では完璧な善意を持っていなくても、相手を傷つけない言葉を選び、必要な配慮を行動に移せる人は、十分に優しいとも言えます。
ここは、仕事においても非常に重要です。
マネージャーが、「部下のことを考えている」と思っていても、部下に伝わっていなければ意味がない。
親が、「子どものためを思っている」と思っていても、子どもが支配されていると感じるなら、それは優しさとは言い切れない。
優しさは、気持ちではなく表現です。
そして表現だからこそ、再現性や継続性が難しく、常に配慮し心掛ける姿勢が必要となります。

優しさとは、相手をコントロールしないこと
この本の中心にある考え方として、私に最も刺さった部分があります。
それは、「優しさとは自分の持つコントロールする権利を手放し相手に委ねること」という部分です。
これはかなり重要な考え方です。
仕事や人との関わりの中で、私たちは意識せずとも相手をコントロールしようとしてしまいます。
- こうしてほしい
- こう考えてほしい
- こう動いてほしい
- こう成長してほしい
- こう言えば分かるはず
- こう導けば正しい方向に進むはず
仕事でも、子育てでも、人間関係でも、これはいつでも起こり得ます。
なぜ相手をコントロールしたいのか。
それは、自分が楽だからに他なりません。
相手が自分の思い通りに動いてくれれば楽です。
自分の期待通りに成長してくれれば安心です。
自分が正しいと思う方向に進んでくれれば不安が減ります。
でも、それは相手のコントロール権を奪うことでもあります。
優しさとは、相手を自分の思う正解に誘導することではありません。
相手が選ぶ余地を残すことです。
相手が失敗する可能性も含めて、その人の人生や仕事を相手に委ねることです。
これは本当に難しく、意識しなければすぐに忘れてしまいます。
ただし、委ねるには責任が伴う
ここで大事なのは、委ねることと丸投げは異なるということです。
優しさとは、相手にコントロール権を渡すことです。
しかし、そこには条件があります。
- 相手がそれを望んでいること
- その結果起きたことに責任を持つこと
これが必要です。
たとえば、部下に仕事を任せる。
これは一見、優しいように見えます。
しかし失敗した部下に対し、「任せたのだからあなたの責任です」と言うなら、それは単なる丸投げです。
逆に、任せたふりをしながら細かく口を出し続けるなら、それも優しさではありません。
それは単なるコントロールです。
本当に難しいのは、任せることと責任を取ることのバランスを意識することです。
部下に委ねる。
ただし、失敗したときには上司として責任を取る。
恥をかかせない。
スベらせない。
必要な場面では支える。
これは簡単ではありません。
でも、マネジメントにおける優しさとは、まさにここにあります。
自分は相手をコントロールしたいだけではないか
優しさとそうでないものを分けるためには、「結局、自分は相手をコントロールしたいだけではないか」という問いが重要です。
これは仕事でも日常でも起きます。
部下に対して、「成長してほしい」と思っている。
でも、その中身をよく見ると、「自分が安心できるように動いてほしい」という願望の裏返しでしかない。
家族に対して、「あなたのためを思っている」と言う。
でも実際には、「自分が不安にならない選択をしてほしい」という意図が見え隠れする。
親しい人ほど、相手を自分のコントロール下に置こうとしてしまう。
本当は身近な人にこそ優しくすべきなのに、近い関係ほど相手を思い通りに動かそうとしてしまう。
これはかなり耳が痛い話であり、誰もがその罠に陥ってしまいます。
初対面の人には優しくできる。
でも、身近な人には優しくできない。
なぜか。
それは、初対面の人には責任も期待も継続的な関係もないからです。
その場限りだから優しくできる。
一方で、身近な人には期待があります。
継続した関係があります。
責任があります。
だからこそ、ついコントロールしたくなる。
ここに、優しさが続かない大きな理由があります。
無責任でいられる限りでの優しさ
優しさには、少し嫌な側面もあります。
それが、無責任でいられる限りでの優しさです。
たとえば、旅先で困っている人に少し親切にする。
初対面の人の話を聞く。
その場限りの相手に丁寧に接する。
これは比較的発揮しやすい優しさです。
なぜなら、その後の責任を負わなくてよいからです。
でも、継続的な関係ではそうはいきません。
善意で始めたことがいつの間にか義務になる。
相手がそれに慣れる。
フリーライドする人が出てくる。
こちらのコントロール権が奪われていく。
そして嫌気がさす。
この構造は職場でも同じです。
最初は親切にフォローしていた。
でも、それが当たり前になる。
相手は自分でやらなくなる。
こちらの負担だけが増える。
そして、優しさが怒りに変わる。
これは本当に現実的な問題です。
だから、優しさには境界線が必要です。
なぜなら、優しさは無限ではないからです。

怒りとは何か
この本に含まれるもう一つの大きなテーマが、「怒り」です。
怒りとは、何かを修復したい欲求というより、何かが壊れていることを理解する手段です。
人は、自分の中の何かが侵害された瞬間に怒ります。
- 公平感
- 尊厳
- 期待
- 信頼
- 境界線
- コントロール権
何かが壊れている。
何かがおかしい。
それを知らせるサインが怒りです。
ただし、優しさに反して怒りは長く続きます。
暗い感情はどこまでも続いていく。
人は、優しかった記憶よりも、傷つけられた記憶を長く持ちます。
親切にされたことより、不当に扱われたことを忘れません。
だからこそ、優しさを続けるには感情に流されない技術が必要です。
教育や指導において、優しさは最も試される
この本の示唆は、マネジメントや教育の成功にも通じます。
なぜなら、教育や指導とは、相手のコントロール権を一時的に得る行為だからです。
上司は部下に指示できます。
教師は生徒に指導できます。
親は子どもに影響を与えられます。
つまり、相手よりも強い立場に立ちます。
そのときに、優しさが試されます。
相手のためを思う。
でも、相手を支配しない。
相手に任せる。
でも、責任は取る。
相手の成長を願う。
でも、自分の正解に押し込まない。
これは本当に難しい技術です。
特に仕事では、上司には責任があります。
部下が失敗したら、組織に影響が出る。
顧客に迷惑がかかる。
自分の評価にも影響する。
だから、ついコントロールしたくなります。
しかし、コントロールしすぎれば、部下は成長しません。
踏み込み過ぎれば、ハラスメントになることもあります。
このバランスこそマネジメントの難しさであり「優しさ」の本領が発揮される部分です。

優しさは「いい人」でいることではない
ここまで考えると、優しさとは単に「いい人」でいることではないと分かります。
- 相手をコントロールしないこと
- 相手の選択を尊重すること
- ただし必要な責任は引き受けること
- 自分の限界も理解すること
- 境界線を持つこと
- 言葉と行動で示すこと
これはかなり高度な技術であり、一朝一夕で身につくものではありません。
優しさとは、何でも許すことではありません。
相手にすべて合わせることでもありません。
自分だけが我慢することでもありません。
むしろ、本当に優しくあるには、自分の境界線をはっきり描くことも必要です。
何より、自分が擦り切れてしまえば、優しさは続きません。

優しさが続かない自分を責める前に、優しさの構造を理解する
『やさしいがつづかない』を読んで強く感じたのは、優しさを精神論で捉えてはいけないということです。
優しさは、性格だけの問題ではありません。
感情だけの問題でもありません。
優しさとは、相手のコントロール権を奪わず、相手に委ね、その結果に責任を持つ態度と行動です。
だからこそ難しい。
人はフリーライダーを許せない。
不正義に怒る。
親しい人ほどコントロールしたくなる。
善意が義務になると疲れる。
優しさは続かない。
一方で、怒りや暗い感情は続いてしまう。
だからこそ、優しさには仕組みと技術が必要です。
仕事でも、家庭でも、マネジメントでも、子育てでも、「優しくありたい」だけでは足りません。
自分は相手をコントロールしようとしていないか。
相手は本当にそれを望んでいるのか。
任せた後の責任を引き受ける覚悟はあるのか。
自分は擦り切れていないか。
境界線を引けているか。
こうした問いを常に忘れない態度が必要です。
優しさが続かない自分を、ただ責める必要はありません。
でも、続かない理由を見ないまま「自分は優しい人間だ」と思い込むのも危うい。
優しさとは、一度身につければ終わりのものではありません。
関係の中で、何度も試されるものです。
だからこそ、この本は読む価値があります。
優しくありたい。
でも、優しさが続かない。
その矛盾に苦しむ人にとって、人生とキャリアの指針をくれる一冊です。
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