コンサルタントに必要な資質

正論では人は動かない納得の理由と感情の扱い方

tsumakawa

1. はじめに ―「正しいのに動かない」という仕事の違和感

ビジネスの現場や人間関係の中で、こんな経験はないでしょうか。

間違ったことは言っていない。むしろ正しい。

なのに、なぜ相手は動いてくれないのか?

たとえば職場で、あなたがリーダーとして「今のやり方は非効率だから、この新しいプロセスに切り替えよう」と提案する。


数字も根拠も揃っている。論理も破綻していない。
コンサル目線で見ても「正論」であるが、それでもメンバーの反応は鈍い。
最悪の場合、「やらされ感」や反発すら生まれる。

家庭でも同じ構図があります。

  • 親が子どもに「今勉強しないと将来困る」
  • パートナーに「その選択はやめた方がいい」
  • 友人に「それは非合理だよ」

どれも内容は正しい。
しかし、関係性が良くなるどころか、距離が生まれてしまうことも少なくありません。

なぜでしょうか。

本記事ではこの問いに対し、コンサルタントとしての経験を踏まえて整理していきます。

  • なぜ正論は人を動かさないのか
  • 人は何に納得して行動するのか
  • 正論を「武器」として使うにはどう考えるべきか

2. 正論が通じない理由 ― 現場で見えてきた4つの構造

(1) 多くの場面で、人は「正解」を求めていない

まず大前提として押さえておきたいのはこれです。

人は常に正しい答えを求めているわけではありません。

特に感情が動いている場面では、以下のような欲求の方が圧倒的に強くなります。

  • 共感してほしい
  • 分かってほしい
  • 否定されたくない

営業で失注した部下に対して、「事前準備が足りなかったね」と言うのは正論です。
しかし本人は、言われなくても分かっており、その瞬間に必要なのは正解ではなく、「悔しかったよね。あの案件、難易度高かったよ」という感情の受け止めです。

正論が刺さらないのは、相手が「答え」ではなく「感情の処理」を求めているタイミングだからです。

(2) 人は理性で動くのではなく、感情で動いてから理屈をつける

これは脳科学や行動経済学の分野でも繰り返し示されています。

意思決定は、感情 → 行動 → 理屈(正当化)という順序で行われます。

「合理的に考えて決めた」と本人は思っていても、実際には感情が先に動いているケースがほとんどです。

不安・恐れ・怒り・プライド。
こうした感情が強く働いている状態で正論を投げても、
相手の脳は「理解」ではなく「防御」に回ります。

その結果、正論は内容以前に拒絶される結果となってしまいます。

(3) 正論は一瞬で「否定」や「上下関係」に変換される

正論の怖さはここにあります。

言い方や関係性次第で、正論は簡単に

  • 「あなたは間違っている」
  • 「私は正しい側にいる」
  • 「従うべきだ」

というマイナスのメッセージに変換されてしまいます。

その瞬間議論は終わり、人は論理ではなく、自尊心を守るために動かなくなってしまいます。

これは上司・部下だけの話ではありません。

  • 夫婦
  • 親子
  • 友人

すべての関係性で同じです。

正論が通じないのではなく、正論が「攻撃」として受け取られてしまっている状態です。

(4) そもそも「問い」がズレているケースが最も多い

コンサルの現場で最も多い失敗がこれです。

答えは正しい。でも、問いが間違っている

たとえば、「売上が落ちている → もっと訪問件数を増やそう」

これは一見、正論です。

しかし、真の原因が

  • 商品の競争力不足
  • ターゲットのズレ
  • 顧客体験の劣化

にあるなら、訪問件数を増やすほど現場は疲弊します。

正論が機能しない最大の理由は、答えではなく、問いの設計ミスなのです。

3. 人はなぜ「正しさ」より「納得感」で動くのか

(1) 行動の引き金は、いつも感情にある

禁煙・転職・独立・ダイエット。
どれも正論は山ほどあります。

それでも人が動く瞬間は、

  • 大切な人の一言
  • 強烈な失敗体験
  • 恥ずかしさや恐怖

といった感情の揺れが起点です。

正論はきっかけになりにくい。
感情が動いた後に、正論が「理由」として使われる場合がほとんどです。

(2) 共感は、正論の通訳装置である

いきなり正論を投げるのではなく、

  1. 気持ちを受け止める
  2. 背景を理解する
  3. その上で視点を提示する

この順番を踏むだけで、同じ正論でも届き方が変わります。

「あなたの考えは分かる」この一言があるだけで、相手の防御は下がります。

(3) 人を変えるのは、正論ではなく小さな成功体験

理解と行動は別物です。

  • 分かっているけど、できない
  • 正しいけど、やらない

このギャップを埋めるのは、「やってみたらうまくいった」という実感しかありません。

だからこそ、

  • 一気に変えようとしない
  • 小さく試す
  • 成功体験を一緒に言語化する

これが、行動変容を生む最短ルートです。

4. 正論を機能させる鍵は「問いの質」にある

(1) 解決策より先に、問いを疑う

「どうすれば成果が出るか?」よりも、

  • 何を成果と定義しているのか
  • それは本当に今目指すべきものか

を問い直す方が、よほど価値があります。

(2) 「なぜそうなっていないのか」を掘る

正論は「こうすればいい」で終わります。

しかし本当に重要なのは、「なぜ、そうなっていないのか?」という問いです。

  • 意志の問題なのか
  • 能力の問題なのか
  • 環境の問題なのか

問いを変えると、打ち手はまったく変わります。

(3) 問いを磨くための実践フレーム

  • 5回のなぜ:原因を表層で止めない
  • 視点の転換:顧客・第三者ならどう見るか
  • 制約解除:制限がなければ何をするか
  • 逆張りの問い:やらない方がいい理由は何か

正論を磨くより、問いを磨く。それが人を動かす思考の土台となります。

5.コンサルに求められるのは「正解を出す力」ではない

コンサル転職を考えている人の多くが、無意識にこう思っています。

「ロジカルに考えられる」
「正しい答えを出せる」
「フレームワークを使いこなせる」

これらは確かに重要です。
しかし、それだけでは“良いコンサル”にはなれません。

なぜなら、クライアントが本当に困っているのは、正解が分からないこと
ではなく正解は分かっているのに組織が動かないことだからです。

コンサル現場は「正論が効かない世界」でできている

実際のコンサル現場では、こんな状況が日常茶飯事です。

  • データ上は明らかに非効率な業務
  • KPI的には見直すべき評価制度
  • 市場分析的には撤退すべき事業

正論は、最初からほぼ見えています。

それでも、

  • 社内政治
  • 過去の意思決定への執着
  • 現場の感情
  • マネジメントのプライド

といった要素が絡み、簡単には動きません。

つまりコンサルの仕事とは、以下のように表現することができます。

「正しいことを言う仕事」ではなく
「正しいことが“実行される状態”をつくる仕事」


6.面接で評価されるのは「問いの立て方」

コンサル転職の面接で、ケース面接や思考力が問われる理由もここにあります。

評価されているのは、知識量フレームワークの暗記ではありません。

本当に見られているのは、

  • その問題設定は本当に妥当か
  • 何を前提として疑っているか
  • どこに人が動かないボトルネックがありそうか

という「問いの質」です。

正論を速く出す人よりも、以下のような問いを自然に出せる人の方が、コンサル適性は高く評価されます。

「そもそも、何が問題だと定義されていますか?」
「誰が納得していないと、この施策は止まりますか?」


「納得感」を設計できる人が、キャリアでも伸びる

これは面接に限らず、キャリア全体にもそのまま当てはまります。

  • 上司を説得できる人
  • プロジェクトを前に進められる人
  • 周囲を巻き込める人

これらに共通するのは、正論の強さではなく納得感の設計力です。

コンサル出身者が事業会社に戻っても活躍しやすい理由は、答えを出す力
ではなく人と組織が動く構造を理解していることにあります。

8.コンサル転職を目指す人が、今から意識すべきこと

もしあなたがコンサル転職やキャリアアップを考えているなら、
次の視点を持つだけで、思考の質は一段上がります。

  • 正論を言う前に「誰が納得していないか」を考える
  • 解決策より先に「問いは本当に正しいか」を疑う
  • ロジックだけでなく「感情・関係性・立場」を変数に入れる

これができる人は、面接でも、入社後でも、確実に伸びます。

コンサル的思考とは、賢く見えるロジックを語ることではありません。

  • 正論を振りかざさない
  • 問いを雑に置かない
  • 人が動く前提で考える

この姿勢そのものです。

正しさより、納得感。
答えより、問い。

この感覚を持てた瞬間から、あなたの仕事の影響力も、キャリアの選択肢も、確実に広がっていきます。

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kei_nakamura
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経営コンサルタント
外資系コンサルティングファームで経営コンサルタントとして働く30代。 これから「コンサルタント」というキャリアそして人生を目指す学生、社会人に向けコンサルタントという世界で生き抜くための考え方やおすすめの書籍情報を執筆中。
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